こんにちは、赤です。
私の住む街も、時の流れとともに再開発が急ピッチで進み、亡き人と楽しみに通った名店も、今では数少なくなりました。
その中には、忘れる事のできない串揚げ屋さんがあります。
大切な人を亡くして、まだ間もない頃の事でした。
いつもの様にカウンターに座って注文しょうとした、その瞬間…。
それまでのいろいろな思いが一気に頭を駆け巡って、不覚にも涙があふれてしまいました。
「ここは人前なのだから」と、なんとかこの場を堪えようと心の中でもがけばもがくほど、その時間が延々と続く様な気がして…。
やっとの思いで、気を取り直して串揚げに手を伸ばしてみても、大切な人の不在という空虚感には勝てず、串を持つ手が止まっていると…
お店のご主人が私の好きな串を覚えていてくれていたのか、もう一本、黙ってお皿に置いてくれたのです。
その日は頼んでいなかったのに、そっと置いてくれた優しさ…。
その時の私はどんな言葉をかけてもらうより、何も聞かずにそっとしておいてくれた優しさが心にしみました…。
暫くしてそのお店もなくなり、きちんとお礼も言えないままになってしまった事が心残りでなりません。
(赤)