一座

なんと、旅劇団の一座の公演の真っ最中でした。


それは新春に、ぶらりと立ち寄ったリゾートスパでの出来事です。


ステージの隅には遺影が飾ってあり、色とりどりの花に包まれていました。


舞台の演出なのかな?と思っていたところ、スポットライトを浴びた女座長の挨拶が始まり、一座のメンバーでもあった息子さんの一人が、昨年の春に亡くなり、今日が月命日だという事でした。


毎日、悲しみに泣き暮らしていたけれど、周りの人の支えや声援を受けて、この新春からやっとステージに立った、との言葉に会場は割れんばかりの拍手の嵐。


息子さんの遺影を持ちながら躍る座長の気迫のこもった、渾身のステージに私の魂が揺さぶられました。


座長としてよりも母親としての息子さんへの想いは、いかばかりでしょう。


心の中で目を閉じ、精一杯のエールを送りました。

(赤)