2012年

5月

31日

亡くなってからもできること

大切な人と死に別れて
「もうその人のためにできることは、何もないのだ……」
そう思っていました。


平均寿命よりもうんと若くして逝ったその人との時間が
まさかこんなにも短いものだったとは。

甘い甘い私には、到底思い及ばなかったのです。


もっと一緒に過ごしたかった。
教えてもらいたいこともまだまだたくさんあった。
相談にだって乗ってもらいたかった。
買い物だって旅行だってしたかった。

何より、話を、気持ちを丁寧に聴いてあげれば良かった。
逃げずにきちんと向き合えば良かった。


亡くなってしばらくは
「もう私には何もできない…」
本当にそう思っていました。


でも亡くなって半年ほどして、考えが変わりました。
きっかけは一つの箸置きです。


我が家の宗派では、お仏壇にご飯をお供えします。
本来ならご飯だけでお箸は必要ないようですが
「お箸がないと食べられないから」という理由で
お仏壇にはずっとお箸と箸置きが置いてあります。


当初は家にあった箸置きを使っていましたが
たまには変化を付けようと思い
亡くなって半年も過ぎる頃に、雑貨屋さんで箸置きを買い求めました。


かわいい傘の形。
色は、亡くなった人が大好きだった黄色。
値段は105円でした。


久し振りにいい買い物ができた気がして、少し嬉しかったです。
お仏壇に並べて、ほうっと気持ちが落ち着いたことを覚えています。


以来、かわいい箸置きを見掛けると買い求めるようになりました。

今は500円ほどで、色々な箸置きがたくさん売っています。
「あ、これなら喜びそう」と、本人の反応を思い浮かべながら選びます。


お仏壇のご飯やお茶を替えたり、お花を供えたり
そういった決まりきった行為ではない
本来なら置く必要のない箸置きだからこそ
「大切な人のために選んで買ったんだ」と実感し
気持ちを落ち着けることができたように思います。


箸置きが一つ二つと増えていく度に
私の中で「できること」も増えていきました。


亡くなった人が好きだったテレビ番組は
放映時間にチャンネルを合わせ、テレビをお仏壇に向けます。

好きだった歌手のCDが発売になれば購入し
お仏壇に向かって再生します。

好きだった作家の新刊が出れば買い求め
一晩お供えした後は、自分でも読んでみます。


すべては自己満足に過ぎないのでしょうが
自分を責めてばかりいた頃に比べると
ずいぶんと気持ちは楽になりました。


箸置きを集め始め、5年が経ちました。
種類もずいぶんと増え、今では日替わりで交換しています。

私はこれからもずっと
決まったテレビ番組にチャンネルを合わせるのでしょう。
好きだった歌手のCDを聴き続け
決まった作家の本は読み続けるのでしょう。


亡くなった人のために、亡くなった人の代わりに行うそれらの行為と
その人のために買い求める箸置きだけが
自分の気持ちを伝える術のような気がして
私は今日も、箸置きを並べ替えるのです。


(オレンジ)

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「分かち合いの会」のお知らせ

◆6月2日(土) 14時~17時
 *第1土曜日の集まりは、自死遺族の方の集まりです。 

 

◆6月8日(金) 14時~17時
 *第2金曜日の集まりは、主に子どもを亡くした方の集まりです。

  

◆6月16日(土) 17時~19時30分
 *第3土曜日の集まりは、若い世代(主に20代30代)の方の集まりです。 

 

◆6月19日(火) 18時30分~20時30分

 *第3火曜日の集まりは、さまざまな体験の方の集まりです。 

 

◆6月23日(土) 14時~17時
 *第4土曜日の集まりは、さまざまな体験の方の集まりです。

 

◆会場/NPO法人生と死を考える会 事務局(東京都新宿区) JR信濃町徒歩1分
◆参加費/一般1,000円 会員500円

※会場などの詳細は、HPをご覧ください。
http://www.seitosi.org/

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