お弁当

今年の夏も、近くの市営プールでは、子供達の歓声が朝からこだまし、連日のうだるような暑さも手伝ってか、大変な賑わいです。


小学生の頃、私は顔を水につけるのが恐くて、プールで泳ぐのが苦手な子供でした。


そんな私を母は心配して、スポーツ教室に通わせてくれました。


そこは水泳以外にも、跳び箱や体操、球技など、運動全般を指導してくれる教室で、運動が苦手な私は、しぶしぶ放課後に通いました。


すぐに「やめたい。」「もう、行きたくないよ。」と反発しては困らせていた私に、母は愛情がたくさん詰まったお弁当をいつも持たせてくれました。


お腹を空かせて学校から帰ってくる私は、教室に向かうバスの中で、待ちきれずにお弁当を広げたものでした。


引っ込み思案の小学生だった私が、なんとかやめずに教室に通い、泳げるようになったのも、今は亡き母のお弁当のお陰かもしれません。


その時の懐かしい味が、母のあたたかさが、子供達の歓声を聞いていたら突然、胸いっぱいに広がってきて、無性に母の作ってくれたお弁当を食べたくなりました。


(赤)